資金繰り

ラクスルは楽してる?してない? 財務分析で読んでみる




ネット印刷の巨人、株式会社プリントパックに追いつけ追い越せのラクスル株式会社。2018年5月マザーズ上場、2019年8月東証1部上場、のんさんをテレビコマーシャルに起用し、存在感抜群です。

ラクスル 経営状況を俯瞰する

2016~2020年7月期までの5年間の個別財務諸表を分析しました。


企業力総合評価は青信号領域ですが、WARNINGが2つついています。何か問題を抱えているのでしょう。営業効率(儲かるか)、資本効率(資本の利用度)は赤信号領域に沈み、全く儲かっていません。生産効率(人の活用度)は、反転しながら右肩上がりです。流動性(短期資金繰り)は青信号を急上昇し安定、安全性(潰れにくさや長期資金繰り)は急落しました。

ラクスル 営業効率の考察 儲かってない!

営業効率が赤信号領域にどっぷり嵌っているとは、「こんな儲けではだめです。」という状態ということ。財務分析指標はそれぞれ密接に連携しており、営業効率の悪さは他のカテゴリーの財務指標に影響を与えます。2020年安全性急落への遠因です。

営業効率の各下位指標を確認してみましょう。

面白いグラフです。売上高は見事な増加トレンドです。売上高総利益率は、2016年17.80%から改善し2018年以降23%前後で安定してきました。2018年以降売上高総利益率≒売上高販管比率で落ち着いています。今後も増収にもっていく筈で、攻めの姿勢を崩さず売上高総利益率≒売上高販管比率を続けるでしょう。

ラクスルの販売費

販売費及び一般管理費の中の、販売費について考えましょう。

販売費は売上を上げる為のコスト。既存のお客さんが継続して発注してくれるようになり、それが積みあがってこれば、新規顧客を取り込む為の販売戦略に集中できます。既存のお客さんの離脱率が高ければ、販売コストがかかり続けます。

既存のお客さんはなぜ、㈱プリントパックではなく、ラクスル㈱を選ぶのでしょうか。細かいサービス・製品の違いは判りませんが、ラクスル㈱の決算書には売上債権が存在します。㈱プリントパックは、代金前払いだけですが、ラクスル㈱は、後払いできます。ラクスル㈱を選び、離れないお客さんも多いでしょう。

後払いを望むお客さんはどんな人でしょうか。納品された印刷物を確認してしか支払いをしない大規模企業でしょうか。それとも、資金的に苦しい企業でしょうか。前者であれば、大口の顧客を獲得できますが、後者であれば、貸倒損失のリスクがあります。いずれにせよ、債権管理コストはかかります。

元々、ネットで入稿後、入金すれば、後は納品するだけがファスト印刷のビジネスモデル。

ラクスル㈱が㈱プリントパックと同じ、安さで勝負するならば、この債権管理コストを背負う分だけ、コスト高となり、ラクスル㈱は不利になるかもしれませんが、大口顧客獲得が多ければ、それほど問題がないかもしれません。

ラクスル 流動性・安全性

5年間で3,032,954千円の赤字の累積は増資と減資で乗り切ってきました。そのため、総資産の急増という負担がかかっての安全性悪化や、WARNINGです。

総資産急増は、増資、借入金の増加とそれに伴う、現金預金の増加です。

営業効率が悪いままでも増資や、借入に応じてくれる株主や金融機関の存在がラクスル㈱を支えています。

ラクスルの貸借対照表バランス推移

下の貸借対照表バランスの推移は、挑戦する若者への期待の表れでもありますが、不安も感じる筈です。

まとめ 

㈱プリントパックのビジネスモデルは秀逸です。追いかけるラクスル㈱は、新たなサービスを付加して勝負しますが、生じるコスト以上の収益を獲得できなければなりません。生じるコストは何か、いくらか、地味な計算が必要です。今時の上場する企業は、こんな会社も多くあります。

編集後記 久しぶりの5年分析です。最近は10年分析が当たり前、データがあれば更に超長期の分析をします。長ければ長いほど、その会社に横たわる、問題点を抽出できます。その問題の多くは、社内で、「そんな気がする。」という認識はあっても明確にわからない為、改善できないケースが目立ちます。文責JY

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このコラムを、SPLENDID21NEWS第188号 【2021年7月15日発行】として、A3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。

SPLENDID21NEWS第188号ラクスル

 


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