M&A・破綻・その他

不祥事が起こる理由 スシロー(株式会社FOOD&LIFE COMPANIES)




回転すしのスシローを展開する株式会社あきんどスシローの持ち株会社である株式会社FOOD&LIFE COMPANIESを取り上げます。最近、スシローは、おとり広告など不祥事が続いています。お味は好きだけど・・・など複雑な思いをお抱えの方も多いでしょう。

原因は、頑張っても報われた感が無く気持ちが荒んでいると思われます。普通、頑張ったら達成感を得て誇り高い気持ちになるものですが、そうなっていません。なぜでしょうか。

2011~2013年、2015~2021年9月期までの10年間の連結財務諸表を分析しました。2013年は1年未満です。非上場期間などがあり、データが無い為、時系列は断絶しています。

スシロー企業力総合評価スシロー営業効率・資本効率スシロー流動性・安全性

企業力総合評価は、悪化トレンドで黄信号領域を出たり入ったりしています。宣伝や店舗数からイメージと異なるのではないでしょうか。なぜこれほど悪いかは、下位の親指標を見たら分かります。

営業効率は2013年を除き殆ど青信号領域です。悪化した年があっても、翌期は反転して右肩上がりになり、感度は良いと言えます。生産効率は赤信号領域を右肩上がり、資産効率は大きく変動します。財務体質である流動性、安全性は赤信号領域です。
あれ、営業効率が良いのに財務体質が良くならないのはなぜ?そんな疑問が湧いたのではないでしょうか。

この疑問はBSバランスの推移を考察すると解消します。安全性悪化の原因が総資産の増加にある可能性が高いので、ポイントは急増の3回、(1)2013年(2)2020年(3)2021年です。

(1)2013年から突如無形固定資産が多額に計上され、その後減る様子がありません。この年に決定的に財務体質が悪化したと言えます。その後、利益を積み増し、純資産をどんどん増やしていますが、純資産に占める無形固定資産でさえ100%を超えています。

スシローBSバランス

無形固定資産の内訳は、のれん30,541百万円、ブランド53,596百万円、ソフトウエア2,784百万円、その他362百万円です(2021年9月末)。無形固定資産の99%を占める、のれん、ブランドは償却をしないのでいつまでも減りません。価値が無くなれば減損損失として費用化します。
費用は資産から来ます。無形固定資産もいずれ費用となります。その時が来れば、㈱FOOD&LIFE COMPANIESの純資産はマイナスになり債務超過になります。そうならない為に必死で営業効率を上げ、純資産を増やす努力をしています。

(2)2020年に無形以外の固定資産と固定負債が急増し、総資産が急増しました。
これはIFRS16号の適用により、有形固定資産(使用権資産)が94,089百万円、リース負債が、流動負債で10,010百万円、非流動(固定)負債で78,282百万円増加した為です。IFRS16号の適用というのは会計基準をルールに合わせて変更したということですが、経営実態に変化があるわけではありません。しかし、安全性の指標はマイナスに動きます。

(3)2021年の総資産の増加は、株式会社京樽(及びその子会社2社)の全株式を取得し子会社化したためです。成長戦略としてM&Aを選択されたのでしょう。のれんを膨らませることをしなかったのが2013年との違いであり、これからは全社を挙げて純資産を蓄え、「来たる負の遺産の解消(のれんの費用化)に備える」のかもしれません。過去の失策に10年間振り回されています。

12年間に3度の総資産増加がありました。M&Aを行うときには規模拡大に目がくらむことなく、安全性がどうなるのか、あらかじめ想定しておくことが必要だといえます。

まとめ

今の㈱FOODLIFE COMPANIES は、自身がすべきことを理解し、頑張っています。未来に禍根を残す意思決定は10年ほど前に行われ、いまだに引きずっています。

企業経営の中で総資産の増加は起こります。同社の場合、(3)は本意であり、未来を展望できる総資産の増加と言えます。

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編集後記 赤目四十八滝へ行ってきました。山の中に48の滝が次々にあります。折り返しで土砂降り。人生で一番びしょぬれになりました。忘れえぬハプニングに見舞われた真夏のハイキングを楽しみました。文責JY

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