なぜ今、新ホテルを出店できるのか　帝国ホテル

コロナにウクライナ戦争と世界的不況の中で京都に新しいホテルを建設予定の株式会社帝国ホテル。1887年、渋沢栄一氏・大蔵喜八郎氏発起人で設立された帝国ホテルは、実業の神様がついているのでしょうか。

帝国ホテルの経営を俯瞰する

株式会社帝国ホテルの2013～2022年3月期までの10年間の連結財務諸表を分析しました。

何が支えるか　帝国ホテル

企業力総合評価は67.93P→168.46P→168.67P→169.01P→170.73P→170.04P→170.83P→167.37P→116.82P→118.05Pと推移しています。2013年時点で167.93Pとかなり高かったのですが、それから毎年コツコツ改善させていましたが、2021年コロナ禍で急落しました。営業効率・資本効率が2021年2022年大赤字で底値なのに、総合評価は2021年で下げ止まり、2022年は僅かに改善したのはなぜでしょうか。当然、生産効率、資産効率が改善したので総合評価の右肩上がり圧になりましたが、むしろ、流動性・安全性が支えています。

損益計算書の末尾の利益である当期純利益は、貸借対照表の純資産の部に利益剰余金として足しこまれます。大赤字の場合、当期純損失、利益剰余金はマイナス加算されるので、2年連続、純資産は激減・安全性悪化します。当期純損失は現金の流出を伴うので流動資産・現金預金減少・流動性悪化となります。しかし、流動性・安全性は殆ど変わりません。
今の時期、多くの会社は借入金をして流動性を支えますが安全性は急激に悪化する会社が殆どです。
株式会社帝国ホテルがそうならないのは、気の遠くなるほどの長い期間、流動性・安全性の改善に尽くしてきたからです。

株式会社帝国ホテルは1890年開業から133年目です。133年営業してこれば、どんな会社でもそうなるかと言えば、そうでもありません。日本は100年を超える企業はざらにあり、その中でも圧勝しています。

善循環の起点は資産効率　帝国ホテル

圧勝の理由は資産効率を徹底的に良くする経営姿勢にあります。資産効率って、赤信号領域じゃないの？資産効率は悪いでしょう！そんな反論が聞こえてきそうです。BSバランスを見てください。現金預金と純資産の厚みが、相当厳しい赤字を出しても潤沢に存在することがわかります。

資産効率は、流動性に並び、読むのが難しい財務分析指標群を要する親指標です。株式会社帝国ホテルの資産効率が悪いのは、長い間、利益を出し純資産に利益剰余金を積み上げ、現金預金を積み上げてきたため、貸借対照表の左側・現金預金と右側純資産・利益剰余金が沢山あるため資産総額が大きくなっています。つまり貸借対照表は年々積み上げられて金額が大きくなっているのに対し、売上高は毎年の金額なので、売上高と資産の関係である資産効率はどうしても悪くなります。

しかし、株式会社帝国ホテルは、有形固定資産の資産効率が抜群に良いのです。BSバランスを見ると固定資産が減少トレンドです。固定資産の多くは有形固定資産で、減価償却と共に減っていきます。有形固定資産が増えないのは出店せず償却が進んでいるからです。徹底的に今あるホテルの稼働率を高めています。コロナ前で82.1％、2022年でも7割もあります。
お部屋の稼働率は資産効率そのものです。

株式会社帝国ホテルは、有価証券報告書の「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に毎期記載があります。つまり、株式会社帝国ホテルは資産効率をとても大切にしているのです。

まとめ
帝国ホテル京都を開業しても稼働率は、東京・大阪・上高地にも負けないと株式会社帝国ホテルは自信満々なのです。資産効率軽視で企業力総合評価を下げる会社が多い中、資産効率を起点とする成長の善循環をとらえ、見事です。

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SPLENDID21NEWS第204号【2022年11月15日発行】としてA３用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。
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